新疆旅行記

2019GWの新疆旅行記です

2019.5.2:5日目:ホータン〜ウルムチその5

16時ごろ。高速が通行止めとの看板があり、下道に。20時くらいには着くかなあ。

17時、公安。さっきの公安で何やら登録されたせいか。それとも砂漠公路を抜けて普通の道になったせいか。若干短めの時間で終了。それでも15分くらい。

ニヤで聞いた時には17時くらいにウルムチに着くと言ってたっけなあ。ごめんね運転手さん。本当だったらもう着いてたのに。と言ったら、曰く、ウルムチ着は23時くらいになりそうとのこと。 うええ、北京時間だよね、と聞くと、うんにゃ新疆時間、とのこと。わお。深夜1時か。

地球の歩き方」には、ホータン・ウルムチ間は24時間て書いてあったんですが。38時間ですか。大回りした上に公安に引っかかりまくればまあそうなるよね。

ホータン-ウルムチは鉄道だと23時間。硬臥427元。このバスは、下舗380元なので、値段あまりからわらない。 そりゃみんな鉄道乗るよ。

これまた到着が未明になって、宿泊費が1泊浮くやつかな。 なんか今回、飛行機が深夜便だったのに始まり、2日に1回は食うや食わずで夜通し移動してる。 旅行5日目なのに、ホテルに泊まったのまだ2泊だけって、よく考えたらおかしいな。

ニヤから一緒になった日本人女性Mさんは、「修行だと思ってる」と言ってるけど、確かにその通り。

そういえば、前回の旅行で余った人民元使いきるのも、今回の目的の一つだったのに。全然お金使ってないよ。移動ばっかりで使う暇がねえ。 なぜこんなことに。 くそう。バザールで高い急須買って散財してやる。

隣に高速が走ってるのに、通行止のせいで、悪路をジグザグ走行。下り路線は通ってるぽい。いいなあ。 f:id:pazilatpanda:20190503011531j:plain

18時。高速に戻った。文明バンザイ。 街の再開発にボヤくだけボヤいといて、いいとこ取りで申し訳ない。でも早くウルムチに帰りたい。

この辺は風景がコロコロ変わって面白い。 f:id:pazilatpanda:20190503011610j:plain

そう、新疆の寝台バスは、観光客にとって本来、寝たままで次々変わる景色を眺められるアトラクション的な楽しみがあるものなのに。楽しんでる暇がなかった。公安スタンプラリーのオプションはいらないよう。

漢族のおじさんとしばし歓談。 なんだお前カシュガルで中国語勉強したのか。ウルムチにすれば良かったのに。ウルムチなら外にたくさん漢族いるけど、カシュガルウイグル族だらけだからな。効率が悪いだろう。おまえは南疆の方が好きなのか。そうか。おれは北疆人だからな。おい、おれの奥さんとテレビ電話するからなんか喋れ。

そういうおじさんの中国語もかなり訛ってるんだけどね。この辺の漢族の訛りは、外国人にとっては聞き取りやすいので助かります。

中国語の練習をしているウイグルの女の子に、おじさんが発音を教えてる。 女の子の方が、教科書通りの綺麗な発音なんだけど。若いお母さんもニコニコして聞いてるからいいのか。

乗ってきたときは座席の件で大げんかしてた2人だけど。中国の人は切り替えが早いなあ。

ウイグル少女。まだ就学前に見えるんだけど。あんなに中国語しゃべれるのか。すごいなあ。 聞いたら4歳とのこと。まじか。 いま、ウイグルの子供たちは幼稚園も学校も全部漢語で、ウイグル語は家庭だけとのこと。やっぱり。

私が新疆に滞在してた20年前は、特に南疆では、まだウイグル語だけか、あるいは双語教育の学校が多かった。 ウルムチなどの都会では、将来を考えて、漢語の学校に通うウイグルもいたけど、わざわざ「民考漢」と呼ばれるくらい少数派だった。 さらに言えば、どの学校にやるかは、親が選択できた。

彼女がこのまま大人になったら、ウイグル語は話せても、読み書きはできなくなるのだろう。 海外に移住した2世以降によくある現象だけど、なんで故郷にいながらにして、そんな目に会わなきゃなんないんだろう。ひどすぎる。

漢族のおじさんがいる手前、へー、そうなんだー、と知らないふりして聞いてたけど、胸が張り裂けそう。ウイグルの人たちが、少しずつ言葉や信仰や文化を奪われていくのを目の当たりにするのは、本当に悔しい。

女の子、もうすぐお父さんに会えるー、と喜んでるけど、ごめんね。私が乗り込んだせいで。会えるの多分すごい遅い時間になっちゃうよ。

「あーいー、にーはおー(おばさんこんにちは)」と中国語でニコニコと話しかけてくれる彼女にウイグル語で返したら、目をパチクリさせてた。まさか外国人がウイグル語を話すなんて思いもしないんだろう。あと下手すぎて通じなかったんだろう。もっと勉強すれば良かった。

あなたの母語はとても素敵な響きだからどうか忘れないでね。私たち外国人が勉強したくなるくらい素敵なんだよ。 そして母語を表す文字をなくしたら、過去と未来をつなぐことができなくなるから。どうかお母さんこっそり教えてあげてください。言われなくてもきっとやってると思うけど。

漢族のおじさんは「一つの国家なんだから当然だ。国語なんだからな」としたり顔で言ってる。そうですよねー。国語ですもんねー。と無表情で返しておきました。これが、漢族の普通の感覚なんです。

そういえば、今回あちこちで「おまえ“国語”話せるのか」と言われて、引っかかってたんです。「国語」って表現、あまり聞いたことなかったから。普通は中国語のことは「漢語」とか「普通話」とかいうのに。 「漢語」だと漢民族のだけの言葉みたいに聞こえるから、「国語」として、中国人全員の言葉ということにしたいのかな。

楽しそうに新疆民歌「最美還是我們新疆(1番良いのはやっぱり新疆)」を歌うおじさん。 エキゾチックなメロディに漢語の歌詞がつけられた、新民謡の一つです。ほかに「我們新疆好地方(我ら新疆良い所)」などがある。 留学生時代、テレビで何度も流されてたから、私も自然と覚えた。 彼らには、文化を搾取している自覚なんてないんだろう。

同じ漢族でも、台湾の友人は新疆のことに心を痛めていた。 きっと漢族も、生まれながらに鈍感なわけじゃないはず。学校やテレビなど、あらゆる周囲の環境において、子どもの頃から中国の思想を叩き込まれて、他の感じ方を知らないだけなんだ。教育や報道の統制って、本当に怖い。 漢民族自身も毛沢東によって、漢字を簡体字に変えられてるからね。

おいちゃん曰く「お前給料いくらだ? そうかそうか。日本は給料の高いのと低いのの差が大きいんだろう。中国は平等なんだぜ。良いだろう」。

おっちゃんお前、それ本気で言ってるのか…?

スマホがあるから、ウイグルの音楽文化はきっと大丈夫だと思う。ウイグルの人たちは、みんなヒマさえあれば、スマホで歌や踊りやドラマを楽しんでるから。 テレビや学校で学ばなくても、漢族の文化と折り合いをつけながら、ウイグルの文化はたくましく受け継がれて行くのだと思う。

ウイグルの歌や踊りまで禁止されるようになったら、もうダメかも知んないけど。